築30年の特別養護老人ホームの大規模改修計画です。
社会福祉法人静和会は静岡県静岡市を拠点に、複数の老人福祉施設を経営しています。その中で最も築数が古く、かつ100床規模の大きなRC造5階建ての施設の大規模改修を計画しています。今回の改修を通してベッド数を20床減らし、さらに現在行っている特養、ショートステイ、デイサービスに加えて新たに小規模多機能型居宅介護のサービスを始めます。
家の経験/まちの経験
年をとって施設に入居するということは、一人でゆっくりコーヒーを飲んだり、街でナンパしたり、事件に出くわしたり、そんな起伏のある経験全てを失ってしまうということなんじゃないか。静岡にある特養の大規模改修の設計をはじめた当初、「官能都市」の8つの指標を見てそんな疑念が浮かびました。
そこで私たちは、設計の打ち合わせではこぼれ落ちてしまうようなつぶさな日常を探しに、法人さんのSNSの観察を始めました。
SNSでの職員さんのつぶやきには四季があり、時間の流れがあり、人や地域との関係性がありました。職員さんの畑で採れたらっきょを漬けたり、花火の映像を映しながら寝そべって「なんちゃって花火大会」をひらいたり、ご家族と流しそうめんをしたり。施設はそこで暮らす人にとって家であり、街であるということがわかりました。
カフェで友たちとおしゃべりを楽しむように窓辺に集う。畑のようなテラスではいつもあの人が土を触ってる。歌が好きな職員とそれを楽しむ方にとってステージのようなデイルーム。新聞を読む片隅で誰かが料理をしている音がする。自分の部屋のようにゆっくりと心落ち着ける個室。
これまで暮らしてきた家と慣れ親しんだ街での生活が続くような、いろいろなキャラクターをもった場所をご利用者と施設職員との対話を通して考えています。
- 設計
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意匠冨永美保・畠山亜美・市川竜吾・伊藤光俊/tomito architecture
鈴木理咲子/su place -
設備松井知行・大澤武史/Comodo設備計画
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サイン飯田将平/ido
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写真冨永美保・畠山亜美・市川竜吾・鈴木理咲子
- 概要
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所在地静岡県静岡市駿河区丸子
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主な用途特別養護老人ホーム+短期入所生活介護(ショートステイ)+小規模多機能型居宅介護
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構造RC造5階建
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敷地面積8500㎡
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建築面積1700㎡
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延床面積3800㎡
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改修範囲面積1900㎡