微振動する環境と居合わせる
京王井の頭線・駒場東大前駅より徒歩3分。住宅街と駅をつなぐ緩やかな坂道に位置する「うつわとカフェ Lim.」は、日本茶とコーヒーが飲めるカフェと、作家の器を展示・販売するギャラリーである。
敷地に身を置くと、色々なことに出会う。駅と住宅地の間には1日の流れがある。
裏手の小学校からの子どもの声や、夕方に踏切を行き来する車の明かり、踏切越しの桜やセミの声、散歩中の犬、雨。それぞれの原理で自由に重なり連なっていく。内と外の環境や、光と影、抹茶の所作など、その時間に流れるさまざまな事物が豊かに重なる庭のような場所をつくりたいと考えた。
前面道路から奥へと抜けるスケルトンの空間に、陶器やお茶を受け止めるポワンとした大地を置いた。カウンターのようでもあり、展示台のようでもあり、そのどちらでもない大きさ・形の大地である。そこに茶葉を混ぜ込み、繊細な陶器やお茶の陰影・質感に呼応させる。
入り口の建具は、少しかがんで入る躙口とし、にぎやかな前面道路からお茶までの心理的な間を調律した。また、開口に奥行きを持たせることで器の居場所を生んだ。小さな器の群れが外からの光を受け、影を落とし、町の動きと重なって、動的な背景となる。
周辺環境が内部に転写されながらも混ざり合い、空間の質を揺らす。豊かに揺れ動く事物たちの、さまざまな間の中に、お茶も器も人も居合わせている。
- Lim.
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HPhttps://instagram.com/lim.komaba?igshid=2u098una6wkq
- 概要
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所在地東京都目黒区駒場
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主な用途うつわとカフェ
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設計監理冨永美保・林恭正/tomito architecture
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施工ROOVIS
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写真井手野下 貴弘