長浜のお米ラボ

豊かな自然と土地の魅力

 滋賀県の湖北地域にある小谷丁野町は、小谷山・伊吹山と琵琶湖をつなぐ、姉川・高時川が作り出した広大な平野に位置し、昔から水稲耕作で栄えた緑豊かな田園風景が広がる農村集落です。

湖北はその広大さゆえに、昔は水不足に悩まされ、壮絶な水争いのなかで田んぼを受け継いできた歴史があります。地政的な特徴からさまざまな文化が根ざしたこの集落で、お米農家を営むご夫婦の「新しい居場所」を一緒に考えていきます。

プロセス1- 奥さんのための「迷える居場所」

施主はこの集落で100年以上守られてきた田んぼ農家を受け継ぐご夫婦で、この集落で生まれ育った旦那さんと農家のお嫁にきた奥さん。奥さんがこの地域に馴染むまで、安心してゆっくりと考えることができる「迷える居場所」を作りたいという二人の想いからこのプロジェクトは始まりました。

プロセス2- 「つくる」を愉しむ素材の研究所

「お米のおいしさと田んぼが生み出す魅力を発信できる拠点を作りたい。」

丁寧に時間をかけて対話を重ねることで、だんだん二人の思い描く新しい拠点の全体像が浮かびあがってきました。二人は数年前から農業を中心としたイベントに参加し、田んぼや畑で採れた素材を使ったものづくりとその豊かさを発信してきました。例えば、釜でお米を炊いていろんな味のおにぎりを作ったり、米粉からお菓子を作って振舞ったり、収穫した稲を干してわら細工を作ったり。日々試行錯誤しながらお米の魅力を伝える、二人のクリエイティブな場となる、工房のような研究所のようなプログラムが求められました。

ただお米を提供するのではなく、お米を育て、収穫し、みんなで円卓を囲み、美味しいものを一緒にいただくこと。目の前の田んぼを眺めながら、その場所で生まれたさまざまな魅力を味わっていく。

その経験こそが今回の設計にとって重要なものだと感じました。

プロセス3- 田んぼからはじまる「お米ラボ」

「作るもの・作っているもの・作られるもの」それぞれが建築の内外を超えたひとつの環境の中で関係を持ちながら居合わせられるような状態を目指しています。二人のアイデンティティを発信できるこの場所が集落に新たな風を吹き込み、農村と都市、地域や人との新たな出会いを築く、新しい拠点になっていくのではないかと考えています。

  • 設計
  • 調査・計画
    冨永美保・市川竜吾・牧迫俊希・柳沢優志・藤城滉俊/tomito architecture
    滝沢菜智/2022夏インターン
  • 意匠
    冨永美保・市川竜吾・牧迫俊希・柳沢優志・藤城滉俊/tomito architecture
  • 概要
  • 所在地
    滋賀県長浜市
  • 竣工年
    2024年
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